「じゃあね・・・また来るよ。今度は電話するから」
「うん、待ってるよ・・・」
そう言って美由紀と別れてから、もう3時間ほどになりそうだ。今日中には東京に帰れるだろう。夜の新幹線はどこまでも静かだけれど、一向に眠くなる気配がない。窓の外を眺めてみても、床をにらんでみても、目を閉じてみても・・・浮かんでくるのはやっぱり、ようやく再会できたみんなの顔だった。
別れてからすっかり時間がたってしまっていたけれど、みんな僕のことをはっきり覚えてくれていた。もう忘れているんじゃないか・・・そんなふうに不安に思っていた自分が今では少し恥ずかしいし、なんだかみんなに申し訳ない気もする。とにかく僕はうれしかった。3か月もかかってしまったけれど、みんなと再会できて本当によかった。
でも、どうしてみんな覚えていてくれたんだろう・・・僕は今になってふとそう考えた。すると自然に、みんなとの思い出が順々に頭をめぐる。僕はすぐに気がついていた。それは・・・あんなやるせない、つらい別れ方をしてしまったからだ。僕がなかなか言い出せずに、転校間際になって急に切り出したからだ。そのせいでみんなを深く傷つけてしまったから・・・。
そろそろ群馬県だろうか。山間を走る新幹線が、長そうなトンネルへ入る。僕は後悔していた。どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。再会して、真っ先にそのことを謝るべきだったのに・・・。
(『もちろん、覚えています!忘れたことなどありません・・・』)
(『覚えてるよ!忘れるわけないだろう!』)
若菜や千恵のそんな言葉がたて続けに思い出され、僕に追い討ちをかけた。せめて一言でも、何か伝えられなかったのか・・・。なんだかむなしくなってくる。
しばらく自分を責めてみたけれど、そんなことは時間の無駄だとわかっていた。そしてトンネルを抜けるころには、僕はもう決心していた。今からでも遅くない、まずはみんなに謝ろう。そして・・・みんなとの関係を、再会できたことを大切にしていこう。それが、僕を覚えてくれていたみんなのためにできることに違いない。
もうすぐ7月だ。1学期が終われば夏休みが来る。みんなに会って、気持ちを整理して・・・できたら、なくしてしまった時間を少しでも取り戻したい。僕は静かな新幹線の中で、いつの間にかそう思い始めていた。
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